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心不全


はじめに

日本人の死因第2位である心臓病の中でも、「心不全」という言葉を耳にすることは多いのではないでしょうか。しかし、心不全が具体的にはどういうものか知る人は多くありません。ニュース番組などで「有名人が急性心不全で亡くなった」と訃報で使われる「心不全」は、今回お話する「心不全」とは少し異なるものです。みなさんがこの記事で病気を詳しく知り、多くの方に伝えてもらいたいという想いで、書かせていただきます。
こちらの記事は、2019年5月に作成したものです。

心不全は様々な病気の結果

心不全は一言で説明すると、「心臓のポンプ機能が低下して体が必要とする血液が正しくまわらなくなった状態」を指します。その原因は様々で、急性心筋梗塞などの心臓病だけでなく、高血圧・貧血・腎不全なども原因になります。つまり、厳密に言えば心不全は病名ではなく、様々な病気によって心臓のポンプ機能が落ちた状態の総称なのです。

加齢が進むほど心不全は増える

心臓は、加齢とともに機能が落ちていきます。つまり、高齢化が進むほど、心不全の患者さんも増えると言って良いでしょう。心臓のポンプ機能は、収縮力と拡張力の二種類に分けられますが、最近の傾向として収縮力は保っているけれど、拡張力が弱くなる心不全のケースが強くなっています。治療法は変わりませんが、一見心臓が普通に動いているように見えるため、発見しづらくなるという問題点が出てきました。

日本の心不全新規発症推移 日本心臓財団ホームページより引用

急性心不全と慢性心不全

心不全は、急性と慢性の二種類に分かれます。急性心不全は、急激に心臓の機能が低下するものです。訃報 で使われる急性心不全は、「原因不明の突然死」の病名として使われることもありますが、本来は「心臓病を患っていて、急激に心臓の機能が低下した状況」を意味します。突然発症するため生命が危険なことがあります。一方慢性心不全は、心不全の状態が慢性的に続くもので、生活管理、内服治療で長く付き合っていくものです。

心不全の症状

心不全は心臓のポンプ機能低下でおこるものです。そのため、体に血液を送り出せず、疲れやすい・寝られない・手足が冷たくなる等の初期症状が出ます。手足が冷たくて夏場でも暖房をつけるほどの患者さんもいます。そこから症状が進むと、息切れ・呼吸困難といった症状が現れます。

心不全の初期症状 日本心臓財団ホームページより引用

心不全は両足がむくむ

こちらも代表的な心不全の症状ですが、体がむくみます。むくみは腎臓病やホルモンの異常、リンパ浮腫等の病気でも起こりますが、心不全で起こるむくみの特徴は、両足から始まることです。そして、徐々にむくみが体の上へ上がっていきます。心不全では片側の足だけがむくむことはありません。これは、心臓の機能が弱くなったことで腎臓に血液がめぐらなくなり、体外 へ水を出せなくなることが原因です。体内の水が増えることで心臓の負担は更に増え、悪循環が続きます。水によって体重が10キロほど増えるケースもあります。こうしたむくみの原因も、診察で判断することが可能です。

夜に息が苦しくなる

心不全から来る呼吸困難の特徴として、夜に発作が起こることが挙げられます。人間は、立っている時より寝ている時の心臓に血が集まりやすく、負担がかかります。そのため、心不全は睡眠をとる夜に症状が出易いのです。更に細かく言うと、寝ている時に上向きになる・心臓を下にして(左を向いて)寝るのが辛いという症状がおきます。

生活に違和感が出たら受診を

息切れ・呼吸困難は最初の症状として出てきた際には、坂道など負担がかかる場所を歩くと辛いけれど、じっとしていると辛くないという軽度なものです。そこから徐々に普通に歩くだけで辛い、安静にしていても辛いと変化していきます。こうした症状を年齢による衰えと考えてしまいがちですが、今までと 違う・おかしいと感じたら循環器系のクリニックを受診することをお勧めします。基本的な検査は1日で終えることが出来ます。また、心臓を疑って検査をすれば、自分の状態の原因が他にあったとしても、見分けがつくことが多いです。

心不全の検査

検査名 検査の目的
聴診器 心臓の音
心臓超音波エコー 心臓の動き、大きさ、弁の異常
心電図 心臓の不整脈等の異常(直接の心不全の検査ではない)
胸部X線撮影(レントゲン) 心臓の大きさ・水がたまっているか
心臓カテーテル検査 心臓の動きを更に詳しく見る
血液検査(ホルモン検査) BNPを測定する
血液ガス分析・酸素飽和度測定 血液中の酸素量を測定する

高齢者のBNP値は自然に上がる

心不全の検査の一つとして、血液内のBNPというホルモン量を測るものがあります。BNP値が20以下であれば心不全の可能性はないと考えてよいでしょう。値が100を 超えてくると心不全の疑いが出てきます。覚えていただきたいのは、高齢になるにつれてBNP値も自然と上がることです。80歳であれば、BNPが80でも正常です。

心不全で増加するホルモン 日本心臓財団ホームページより引用

心不全の治療

急性心不全治療は入院が基本

ここからは治療のお話です。急性心不全の場合、緊急入院をして治療を行います。急激な息苦しさは体内に酸素がない状況から来るため、酸素吸入・人工呼吸を行います。人工呼吸器をつける場合、喉に管を通す必要があるのですが、技術の進歩によって管を入れなくても、人工呼吸器に近い量の酸素を送ることも可能になりました。急性心不全の場合、患者さん自身で出来ることは少ないのですが、横になると苦しくなる傾向があるため、座位で安静にすることが大切です。長期的な治療としては緩和ケア・人工心肺・心臓移植などの選択肢があります。

慢性心不全治療は食生活管理が大切

慢性心不全治療において一番伝えたいのは、生活を見直すだけでも状況が改善されることです。塩分を控える、食事量を管理する、禁煙・禁酒するなど、食生活管理が非常に大切になります。食生活が悪く、生活習慣病が悪化することで狭心症が起こり、狭心症を繰り返すうちに心臓が弱って心不全になってしまうこともあります。生活習慣病を防ぎ、悪化させないためにも食生活管理をすることに理解を深めて欲しいです。

慢性心不全の薬物治療

使用する薬には様々な種類があり、それぞれ役割が異なります。最近では、心臓が頑張りすぎないように抑制し、ゆっくり動かすことで心臓を長持ちさせることが、治療後の経過を劇的によくすることが分かってきており、β遮断薬での治療が主流となっています。患者さんの状態にあった治療の提供に取り組んでいます。

原因となる病気を治すことが大切

繰り返しになりますが、心不全は、様々な病気によって心臓のポンプ機能が落ちた状態の総称です。心不全の治療をしながら、原因となっている病気を治すことが重要であることを是非覚えてもらいたいです。原因の病気には生活習慣病が密接にかかわっていることが多く、この記事を読んでご自身の生活を見直すきっかけになればよいと考えています。当院は、生活習慣病に関する講演を積極的に行っています。ホームページや当院のチラシから情報を集めて参加してみてください。

当院の心不全治療

済生会横浜市南部病院は、年間200件以上の心不全入院治療を行っている実績があります。加えて、24時間365日、常に病院内に循環器内科医が院内で勤務して診療できる体制を整えています。胸が痛い、息苦しいなどの症状があっても、心臓の病気かどうか自分では判断できない場合もあります。まずは、お気軽に循環器内科にご相談ください。